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NTTの歴史的敗北

光の道に関する報告書が提出され基本方針が了承された。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000094716.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/global_ict/38282.html

どうやら、ここまでで、私はタスクフォースお役ご免のようなので、失礼して自由にコメントさせていただきたい。

世間ではこの報告がソフトバンクの敗北で、NTTの勝利であるように受け止めている向きが多いように思う。しかし私は、これはNTTの歴史的惨敗だと思う。ソフトバンクが勝利したともいえないので、勝ったのは統制経済が好きな人々なのだろう。

注目すべきは、次の三点である
(1)ファイヤウォール強化を「アクセス網及びこれと一体的に設置される中継網」を対象としたこと。
(2)ユニバーサルサービス対象を(ブロードバンドではなく)「光IP電話」としていること
(3)八分岐単位のアンバンドルを事実上要求していること。

NTTにとって「歴史的」惨敗という表現をさせていただいたのは、今まで不可欠設備としての規制対象になっていなかったIP中継網が今後、「アクセス網及びそれと一体として設置される」ものについては不可欠設備として規制対象となるとされているからだ。しかも、その具体化として、「ファイアウォール措置としては、ボトルネック設備保有部門と同利用部門との間での物理的な隔絶、情報管理システム上のアクセス制限等による厳格な情報遮断措置その他適正な競争関係を確保するための体制の整備や実効的な監視の仕組みを検討する」とされている。

このくだり、実は、11月30日に筆者も出席した会議に出た原案では、「これと一体的に設置される中継網」という表現が抜けていて単に「アクセス網+中継網」となっていた。つまり、(競争状態にあるものを含めた)NTTが保有する全ての中継網が規制対象になりそうだった。さすがにそれはやりすぎだと思って発言し、「アクセス網及びそれと一体として設置される中継網」と限定していただいた。しかし、それでもこの規制は極めて強いもので、具体化の在り方として「物理的隔絶」をうたっているということは、今後NGNサービスはインターネットサービスと物理的に隔絶させて提供しなければならないということになる(さすがにそれは無茶なので、今後緩めていくことになるのだろうと思うが)。

ユニバーサルサービスについて「光IP電話」を対象とし、このサービスを持ってメタル電話を撤去してよいとしていることも、奥深い。これは、電話料金の値上げを受け入れるとは考えにくい利用者のことを考えると、光ファイバによる電話サービスを現在の電話サービスの基本料金(NTT東の場合、住宅用1450円から)で提供することを意味している。そして論理的に考えると、光IP電話に使っている設備の光ファイバアンバンドルは当然1450円以内で行われることを想起させる。つまり、ソフトバンクの主張する1400円での光ファイバ提供を事実上やれ、といっているのに近い。これをやるとすると、分岐単位でやるしかない。

さらに深読み(しすぎかもしれないが)して、光IP電話の網イコールNGNと理解すると、それをインターネット網から隔絶させ、基本料金1400円程度で提供しろというのは、つまりNGNを光PSTN網としてのみ存続させろ、といっているに近いように思う。

報告書全体の精神は、競争を通じた光の道実現を求めているので、競争原理を重視しているともいえるのだが、このくだりに限って言えば、極めて統制色強いものとなっている。ちょっと極端な言い方をすると、網を国家管理下におくような話に近い。

NGNを光アクセスと一体的なものとして開発してしまったNTTの自業自得とも言えるのだが、NTTに(民間企業としては)死ねと言っているのに近いと思う。このまま実施されてしまうくらいなら、資本分離をして自由を獲得したほうが、NTT株主にとってかえって良いとも思う。

さすがに今後の具体化の中で配慮がなされることと思うが、注意深く見守っていきたい。この国の自由経済を殺してしまわないようにするためにも。

(平成12年12月14日に書いたものを15日に微訂正)

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